サッカーと暑さ指数WBGT値。対策で熱中症を防げるのか?

久しぶりに中学生の息子のサッカーを応援してきた。第58回神奈川県中学校総合体育大会 兼 第67回神奈川県中学校サッカー大会。試合会場は大和市にある「ゆとりの森」だった。勝ち進めば関東・全中、負ければ中学3年生にとって引退となる大切な試合。

キックオフは昼頃。30分ハーフで、各ハーフにクーリングブレイク1回+飲水1回が設けられた。単純に考えれば30分を3等分して10分おきに水分補給ができる計算だ。この会場における暑さ指数(WBGT)は公表されていないと思うけど、当日はジリジリと暑い日で、人工芝のグラウンドなのでピッチでは相当なWBGT値になっていただろうと感じた。

試合当日の海老名における時間別WBGT値。実況推定値(速報版)

環境省から発表されている暑さ指数(WBGT)全国の過去のデータが掲載されてます。試合会場は大和市にある「ゆとりの森」ですが、大和市のWBGTのデータが見つからなかったので、大和から10km程離れた海老名市のWBGT値を参考に載せておきます。試合会場の値は異なるかもしれませんが、応援している保護者も倒れそうなくらいの暑さで、選手たちには相当厳しい天気だった。
https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php

  • 8:00 = 32
  • 9:00 = 34.2
  • 10:00 = 35.3
  • 11:00 = 35.8
  • 12:00 = 35.4
  • 13:00 = 34.7
  • 14:00 = 32.8
  • 15:00 = 32.5
暑さ指数を計測するWBGT計できちんと測りましょう!

サッカーにおける熱中症対策はどうなっているのか?

JFA(日本サッカー協会)が定めている「熱中症対策ガイドライン」の7条、試合の実施についてを下に転載します。

JFA 熱中症対策ガイドライン7条

STEP1(必須事項)

以下の方法を組み合わせ、試合の前・中・後に身体冷却を行う。

外部冷却
アイスバス、アイスパック、クーリングベスト、ミストファン、送風、頭部・頸部冷却、手掌冷却 等

内部冷却
水分補給、アイススラリー(氷と飲料水が混合したシャーベット状の飲料物) 等

STEP2(28℃≦WBGT実測値の対策事項)

(1) ベンチを含む十分なスペースにテント等を設置し、日射を遮る。 ※全選手及びスタッフが同時に入り、かつ氷や飲料等を置けるスペース。 ※スタジアム等に備え付けの屋根が透明のベンチは、日射を遮れず風通しも悪いため使用不可。

(2) ベンチ内でスポーツドリンクが飲める環境を整える。 ※天然芝等の上でも、養生やバケツの設置等の対策を講じてスタジアム管理者の了解を得る。

(3) 各会場にWBGT 計を備える。

(4) 審判員や運営スタッフ用、緊急対応用に、氷・スポーツドリンク・経口補水液を十分に準備する。

(5) 観戦者のために、飲料を購入できる環境(売店や自動販売機)を整える。

(6) 熱中症対応が可能な救急病院を準備する。特に夜間は宿直医による対応の可否を確認する。

(7) クーリングブレークまたは飲水タイムの準備をする。

(8) 試合時間の短縮、ハーフタイムの時間の延長を積極的に検討する。 ※予め大会要項に規定しておく。 31℃≦WBGTの場合は試合を中止・中断又は延期する。ただし、STEP1+2に加えて、以下STEP3+クーリングブレークの全てを実施した場合に限り、主催者判断で試合を実施することができる。

STEP3

(9) 屋根の無い人工芝ピッチは原則として使用しない。

(10) 会場に医師、看護師、BLS(一次救命処置)資格保持者、JFAスポーツ救命ライセンス講習会(救命講習会)又はJFA+PUSHコース(簡易救命講習会)受講者のいずれかの受講者を常駐させる。 ※いずれの該当者もいない場合、例えば監督会議後にJFA+PUSHコース開催等を検討する。

(11) クーラーがあるロッカールーム、医務室が設備された施設で試合を行う。 ※選手等が試合中すぐ利用可能な距離にあること。


試合が出来た事に感謝

まずは、この異常な暑さの中、子供たちの為に試合を運営してくださった審判・本部・関係者の皆様お疲れ様でした。タイトなスケジュールの中で運営者側にもこの暑さの中で試合開催するべきなのか迷いもあったのではないかと想像します。ピッチのすぐ側にある建物をクーリングシェルターとして利用して、涼しい部屋で子供たちの体温を一時的にでも下げたことは非常に良かったと個人的に思いました!出来れば前半・ハーフタイム・後半、3度位はシェルターへの避難が必要な状況だっと思いました。また、前半のクーリングブレイクが入るタイミングが遅いかなぁとは感じましたが、ゲームの流れなどありますので当然ですが審判の判断を尊重します。

結果的に試合をしたことは正しかったと判断するのか?

このような子供たちとって大切な試合では、子供たちは限界まで、倒れるまで無理をして走ります。どんなに注意を払って運営してくださっても、子供たちに万が一の事が起こりえる。そう感じた試合だった。この日の1試合の中で何人もが熱中症と思われる症状になっていました。

  • フラフラになって交代した選手が居ました。
  • ゴール裏へボールを取りに行ったGKが倒れこんだまま動けず交代していました。
  • 救急車で病院へ搬送された子が居ました。
  • 救急車には乗らなかったけど、試合後に病院へ車で直行した子が居ました。

対策をしても熱中症を完全に防ぐのは不可能

万全の準備の下で開催された試合だと信じています。しかしこれだけの暑さの中です。どれだけ注意しても危険だという事なんだと思う。複数の子供たちが熱中症の症状が出ていて、実際に救急車で搬送された子がいます。結局のところ、スケジュールありきなので、試合を開催するしかなかったという事でしょう。本来ならばこの危険な時間帯を避けて試合を行う代替案を用意する必要があったのだろうと思った。

熱中症は当日の暑さだけが問題ではなく、子供の体調・体質、前日の睡眠・栄養状況、暑さへの慣れなど様々な事が関係しているので、完全に熱中症を防ぐことは不可能と思う。ただ、大会は連日行われており、このように熱中症の子が複数出てしまった結果を、どう今後に生かすか真剣に考えて欲しい。熱中症で倒れる子、救急車で病院へ搬送する子が出ても問題無しとするのか、それとも同様の条件の場合には試合を行わない、もしくは時間を変更するのか。

子供が犠牲にならないと変わらない

中学生の試合でこんな感じなので、より体の小さい、調節機能が未熟な小学生の試合など危険でしか無いですね。今回の大会とは全く関係ないけど、とある小学生の大会本部ではWBGT計を本部テントの中の日陰で計測しているとか… アラームが五月蝿いからWBGT計の電源を入れないとか…WBGTの値が高いので公式の試合はやらないけどTRMはOK(謎)とか… まだまだ子供の安全が第一に考えられていない、情けない状況が多いのが実際です。

もちろん試合だけでなく練習だって危険だらけです。クラブチームなども練習、合宿をガンガンやっています。夏は一番の稼ぎ時なので、クラブチームを運営するためには、中止の判断は出来ないのでしょうが、子供の安全を第一に考えて欲しいと思います。子供が熱中症で死んでしまってからでは遅いです

ヨーロッパの強豪クラブチームなど、真夏の危険な時期は練習・試合を一切行わないチームが増えています。日本でも子供の安全を第一に考えるサッカーチームが増えて欲しいと思います。

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